【インテリアのコラム】柳宗理の造形美
ちょと前に「柳宗理、その頭の中」という記事で、柳宗理のエッセイを紹介しました。という事で、今回は柳宗理の代表作でもあるバタフライスツールについて深掘りしたいと思います。
バタフライスツールは1956年に柳宗理によって発表されました。蝶が羽を広げたようなフォルムのバタフライスツール。とても有名な椅子なので、名前は知らなくてもインテリア誌などで見た事がるという方も多いのでは無いでしょうか。
誕生までのストーリー
柳宗理のエッセイの中に、誕生までのストーリーが載っているのでまとめたいと思います。
柳宗理がデザイン事務所を開設した頃、戦後間も無くの日本はお金が無くて困っていたそうです。日本はその現状を打破する為に、デザイナーを集めてアメリカへ送ります。アメリカの物作りの技術を習得し、持ち帰る為です。
柳宗理達はチャールズ・イームズの元を訪ねます。当時、戦時中に負傷したアメリカ兵士の怪我した足を守る足カバーを、イームズは曲げ合板で作っていたそうです。この技術を使って、あの有名なイームズチェアは誕生しました。
その技術に驚いた柳宗理は、日本に戻りビニールシートを温めては曲げ、色々な形を作り試行錯誤を繰り返します。その期間約3年。試行錯誤を繰り返す中で次第にバタフライスツールのイメージが出来上がっていったそうです。
ただ、当時あまりに奇抜なそのアイディアを受け入れ、造ってくれる工場はどこにも無かったそうです。
唯一、仙台の工藝試験所の技術者の方が興味を示します。そこから、この技術者の方と工場を探すのですが、それでも当時見た事も無い形と作り方のバタフライスツールを造ってくれる工場は見つかりません。
そこで柳宗理は試作品を作り、国際デザイン展に出品します。デザイン展では賞を受賞します。その事が新聞に掲載され、山形の天童木工で作られる事になった訳です。
形状
バタフライスツールに用いられている合板は、厚さ1ミリの単板を接着剤で数枚を合わせ、高周波でプレスし成形しています。左右対象の「フ」の字に成形した合板を二個のボルトで背中合わせにしつなぎ、脚部が開かないように一本のステーでつなぐというシンプルな構造です。
この形状は和室にも合いますが、海外でも評価が高く、サイドテーブルやソファのオットマンとしても使われています。
まとめ
この有名なバタフライスツールも、柳宗理が工場に製作を頼む中、途中で諦めていたら誕生していなかった訳です。
もの作りの背景を知ると、その物を見る視点が変わり面白いですね。