【本のコト】読書にまつわる32人のエッセイ集

本が好きな人は、他の人の本を好きなエピソードを聞いたり読んだりするのも好きなのではと思います。少なくとも私はそうです。どんな本に影響を受けたのか、何を感じたのか。この本はまさに、そういう本だなと思います。32人の読書との関係を綴るエッセイ集。読書のとびら。
読書を巡るストーリー
赤川次郎さんや、川上未映子さん。ロバートキャンベルさんなど。著名人が読書にまつわるエピソードを寄せています。
個人的に中でも好きだったのは、川上未映子さんの項。
川上さんのご家族は本を、誰も読まなかったそうですが、川上さんは誰に勧められるでもなく、本の世界にのめりこんでいったとのこと。私の家族も本を読まないので、読書に関しては遺伝って無いんだなーと、思ったりします。
以下、個人的に目に止まった箇所の抜粋です。
赤川次郎さん
読書というのは、通り過ぎてしまうものではなく、一旦自分の内へ取り込めば、眠り続けていても消えることなく、何かのきっかけがあれば時間を超えてよみがえってくるものだ。
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江川紹子さん
「世間」に流され、自分で考えることを放棄すれば、角が立つこともなく、安穏と生きることも可能かもしれない。そんな個人が個人として行きにくい中、「世間が」ではなく、「あなたは」どう考えているのか、「私は」どう生きるのか……。
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川上未映子さん
例えば人が何かに影響を受けるとき、それが人でも作品でも、自分が「影響を受けたい」と思ったものから必ずや影響を受けられるというわけではありません。それは例えば、ある人やある音楽のことを「好きになろう」と思ってみたところで好きにはなれなかったり、「おいしいから」と人に勧められて食べてみて、いくら自分がそれをおいしいと思いたくても思えないというのと似ていて、肝心なところはいつだって、自分の意識じゃどうにもならないことがほどんどです。
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2011年に発売された本で、今は中古しか市場に無いようですが、読書好きな方におすすめしたい一冊です。読書をしても、それが自分にとって役に立っているのか、立たないのか。実感があったり、無かったり。それでも、読書をしていると自然と自分にとって決定的な一言に出会ったり。自分にとっての読書を考えるきっかけに。